器械体操部 〜大会練習編〜

後藤輝鋭



「ちわ〜!」
 5月も末の日、夕方4時。小学校の体育館に制服姿の中学生が現れた。体育館の中では体操服を着た小学生20人くらいがマットや跳び箱、鉄棒で器械体操の練習をして、それぞれの場所に先生がいて指導をしている。ここはこの小学校の器械体操部の練習場、あと2週間で大会があるのだ。
「あ、先輩! 今日も来てくれたんですか!」
 マットで演技種目の練習をしていた女の子が、やってきた中学生のそばに駆け寄る。器械体操部部長の木村 芳香。小柄な体に少し長めの髪の毛を後ろでまとめていて、とてもかわいい。今年6年生で、小学校の大会出場はこれで最後だ。
「あら、今日も来たの? テストは大丈夫なの?」
 ジャージ姿の先生が話しかけてくる。湯川 圭子先生。器械体操部の顧問である。
「あぁ、大丈夫ですよ。まだ中間テストまで間がありますから」
 ピシッと学ランを着た中学生、長原 順輔。現在中学2年で、小学校卒業までこの器械体操部の部長をしていた。暇があると帰り道のこの小学校に寄って帰り、器械体操の練習の手伝いをしている。順輔は靴を脱いで、体育館に上がった。
「とりあえず練習続けて、芳香」
 順輔は男子のランドセルが置いてある体育館の端っこにかばんを置き、学ランを脱ぎながら芳香に言った。

 ポーン! とかかかかかかかか!
 踏み切り台の音が勢いよく響く。すぐあとに「ぼさっ!」と安全マットに落ちる音がする。
「おいおい〜、それじゃダメだろ〜」
 順輔が腕組みをして言う。順輔はマット、跳び箱、鉄棒3種目の選手だったのだ。
「ちょい、やらしてみ」
 順輔が同じ演技をする。ぽんっと踏み切り台を蹴って、跳び箱に手をつき、一回転して安全マットの上にすたっと着地した。本格的にやらなくなってしばらく経つが、腕はあまり衰えていない。まぁ、全盛期に比べたら少し体も固くなってるし、そこまで美しくはないが……。
 順輔は、自身が6年の時に大会に出ていい成績を残すかと思われたが、鉄棒の演技中に落下して右足を捻挫する怪我をしてしまい、すべて入賞を逃してしまった。県大会にも出場できると思われていて、学校からもけっこう期待を集めていた。そんなこともあって、大会終了後に悔し涙を流した。ふっと、そんな記憶が頭を流れた。
「ちょっと、長原君」
 跳び箱の指導をしていた順輔を、湯川先生が呼ぶ。
「木村さんを見てくれる? 彼女、後転倒立がうまく行かないのよ」
「え? 後転倒立ですか?」
「うん、彼女それだけうまく出来ないのよ。あとは完璧なんだけどねぇ。いい得点を出したいから」
「あ、はい、わかりました」
 それを聞いて、芳香が練習しているマットの方へ向かう。
「おーい、芳香。ちょい来て」
 芳香を呼んで、別の場所にマットを引き、個別の練習をはじめた。じつは順輔と芳香は恋人どうしなのである。まだ恋人と呼ぶには年齢が低いかもしれないが、14歳と12歳、それぞれこのクラブが縁で知り合った。
 順輔は小4の時から器械体操部に入っていて、小6になったとき、2つ下で小4になった芳香が入ってきた。彼女自身、そのころは元気が取り柄の女の子で、楽しそうだからと言う理由で入ってきた。順輔らがクラブ内の引退式をした2月のその日に芳香から想いを伝えられた。
 友達として、器械体操部のメンバーと共に遊んでいたくらいの仲だったが、順輔はしばらく仲の良い友達として付合ってくれと言い、遊んでいるうちに想いを強めた。いつのまにか、仲の良い友達から恋人同士になっていた。
 芳香は人の前、特に小学校の同級生の前では順輔のことを「先輩」と呼ぶが、もちろん普段は順輔くんと呼んでいる。たまに街でデートなどをしている。今年の春先にはじめてえっちな事も体験した。

「後転倒立だけ出来ないのか?」
「うん、他のは全部うまく出きるんだけどね」
 マットの上で、芳香がまずやって見せる。案の定、うまく行かなかった。順輔が1回やってみて、感覚を思い出す。芳香にアドバイスを言って、もう一度やらせてみた。
「なんでかな〜、倒立した時にぴたっと止まれないか?」
「うーん。それに、脚きちんと立ってる?」
「立ってない。それも原因だよなぁ」
「もう一度やってみようよ。」
 後転倒立とは、後転で頭が下に来たときに、腕をぐいっと伸ばして一度倒立して、立つ。前方倒立回転の逆の演技で、腕力が必要な演技のひとつである。
「いくよ」
「うん」
 芳香が後転をする。脚がぐっと立ち上がってきた時、順輔がそれをつかんで倒立させる。そして手を離して、芳香は立ちあがった。
「今の感覚覚えたか? 今みたいにやるんだぞ」
「はい」
 もう一度、同じ事をする。繰り返し、芳香に感覚を覚えさせた。


「終わり〜!は〜い片付けて〜!」
 湯川先生が叫ぶ。
「あら、今日早いな」
 順輔は体育館にかかっている時計を見て思った。時間は4時半、いつもは5時半頃までやるから今日は終わるのがやけに早い。順輔は湯川先生に駆け寄った。
「先生、今日早いですね。なんかあるんですか」
「うん、これから職員会議があってね。ちょっと抜けられないから」
「あの〜、残って練習させていいですかね?」
「うーん。……まぁ、長原君なら大丈夫でしょう。木村さんでしょ。しっかり練習させて」
「はい、わかりました」
 順輔は湯川先生から鍵を受け取ると、芳香の元へ走った。
「残れよ。居残り練習だ」
 ちょっと低い声で言う。芳香は「えっ」とした様子で順輔を見たがすぐに笑顔になった。
「はーい、わかったよ」
 芳香は片付けをしながら言った。
「あぁ、そこのマット残しといて。使うから」
 順輔が、片付けようとしている後輩に言う。
 マット一列を除いて道具はすべて倉庫に入れられた。湯川先生はすでに職員室へ行っている様だった。
 片づけが終わってから、主に男の後輩が着替えながら順輔に集まってきて、しばらく後輩達と話をする。話す内容は中学の話や、ゲームの話。こんなところで器械体操の話は滅多に出てこない。しばらくするとみんな着替えおわってだんだんと帰っていった。そして、最後に順輔と芳香だけになった。
「じゃあ、練習はじめよう」
「うん」
「とりあえずさ、演技種目一通りやってみて」
 芳香がマットのスタートラインに立つ。順輔はそれを横から見ていた。
 たたたたたたたたっ! ぱん! ざざっ!
 他の種目はうまく出来る。ほぼ完璧だけど、これだけ出来ない。やっぱり後転倒立だけ、うまく出来なかった。
「うーん。これじゃあここだけ目立って、減点が大きくなりそうだなぁ。形だけでもうまく出来ればいいんだけど」
 2人はまた、後転倒立の練習を重点的にはじめた。


 5時。2人はマットを片付け始めていた。
「うまく出来ないね。まだ2週間あるんだからな、練習あるのみだよ」
「うん」
 芳香は少し意気消沈している。ちょっと落ちこんでいるのだろう。順輔は少し困った顔をした。いつも明るい元気な芳香が、落ちこんでいる。やっぱり最後の大会だからなぁ、と順輔は思った。この地区の中学校で器械体操部のある学校はない。
 順輔は、この小学校の練習だけでなく、少しだけ名が知れているので、地域の幼稚園や公民館の体操練習も手伝っていた。器械体操が好きなのもあるが、自分の体を訛らせないためでもある。中学のクラブは文科系だからだ。
 片付けおわって、2人とも体育倉庫のマットの上に座った。女子はいつもここで着替えるからだ。男子禁制みたいなもんだが、ふたりっきりの上こういう仲なので順輔も入っている。芳香のランドセルと私服が置いてあった。
 やっぱり芳香は落ちこんでいる。順輔はそんな気持ちを察して、優しく声をかけた。
「なぁ、そう落ち込むなよ。まだ2週間あるじゃんか。な」
「……うん」
 順輔はため息をついた。そして、ポケットをごそごそと漁った。ちょうど120円ある。
「オレ、ジュース買ってくるよ。2人で1本でいいよね。すぐ戻ってくるから」
 順輔は校門の前の自動販売機に向かって走り出した。

 戻ってくると、芳香は泣いている様だった。順輔は、体育倉庫の入り口でちょっと立ち止まってから入った。そしてさっきの様に、芳香の横へ座った。
「泣いてる? ……泣いちゃダメだろ。まだ大会は先だよ。泣くんなら終わってから泣け。どうせ泣くんなら、嬉し涙を流せよ。オレが流した悔し涙は嫌だから」
「……うっ、うん。…………」
 ぐすっ。
 芳香が鼻をすする。順輔はまたも深くため息をついた。そして買ってきた350mlのスポーツジュースを開けて、クイッと飲んだ。
「飲め、な」
 芳香に渡そうとする。芳香はそれをつかんでぐいっと飲んだ。ヤケ飲み? 順輔はちょっとあきれたような驚いたような表情でそんな事を思った。
「……あと、残りいいよ……」
 順輔が持つと、軽くなっていた。中はほんのちょっと残っている。
(マジでヤケ飲みだ、こりゃ。こんな一面もあったのね)
 出会って3年だが、まだまだ知らない事もある。そりゃあ、体を交えていても。
 順輔は全部飲み干して空き缶を置くと、芳香の頭をくしゃくしゃっと撫でて肩を抱き寄せた。
「……芳香。別の練習だ」
「えっ?」
 芳香が顔を上げると同時に、順輔は芳香にキスをしながら、マットに押し倒した。芳香は驚きつつも抵抗せず、その体を順輔に任せた。そして自らも順輔の背中に手を回した。
 順輔の舌が芳香の前歯をノックする。芳香は口を開いて、自らも舌を出してきた。
 ちゅぷっ、ぺちゃっ、ちゅるっ。
 2人の舌が絡め合う音が体育倉庫に響く。さっき飲んだスポーツ飲料の味が少しする。唾液は交じり合い、芳香の口からすこし流れ出ている。
「んんっ……、んふぅっ……」
 ぴちゃ、……ちゅぷっ……ちゅぅっ……。
 ふたりの唇がつながったまま、順輔は芳香の胸を体操服の上から触る。芳香はスポーツブラを付けていたが、胸の柔らかい感触はそれを通してもしっかりと伝わってきた。
 舌をくいっと吸い取る感じで、順輔は芳香から口を離す。そして、ばんざいをさせて、体操服を脱がした。飾り気のない、白いスポーツブラが胸に付けられている。
「順輔くん……、だめ」
「え?」
 順輔は芳香の顔を見る。芳香の目線の方を見ると、体育倉庫の扉が開いていたのだ。順輔は扉を閉めると、傍らに転がっていたパイプで扉を内側からロックした。
「これでいい?」
 芳香がこくんとうなずく。それを確認すると、順輔はもう一度ほっぺたにキスをして、スポーツブラを脱がす。少しだけ膨らんだ、かわいらしい小学生の白い胸があらわになる。順輔はその胸をぺろっと舐めた。
「ふぁぁっ」
 ちゅっ、ちゅるっ。
「はぁぁっ、んぁぁっ、うふぅっ」
 順輔に鍛えられた芳香の胸は、敏感ですぐに乳首が立ってきた。その乳首を、順輔はこりこりと手でいじり、ちょっと噛んでみた。
「いやぁあっ、噛んじゃだめだよぉ、んっ、順輔くん」
 せつなく悶える芳香。順輔はもう一度キスをすると、下のほうに視線をやった。芳香の大切な場所。そこはブルマーとパンツをはいているにもかかわらず、しっかりと濡れていた。けっこう敏感で、普段からよく濡れる芳香だが、今日は各段に多い。
「芳香、おしっこでも漏らしたのか?」
「あぁん、違う。違うよぉ」
 芳香が首をぶんぶん振る。
「興奮しちゃったの?」
 せつない顔をして、なにも答えない。おそらくものすごく興奮してしまったのだろう。いつも、どちらかの家でしているが、ここは体育倉庫。扉を閉めてあるとはいえ、体育館自体の扉は閉めていない。いつ人が入ってきてもおかしくない状況だった。
 順輔は、芳香のブルマーとパンツをいっしょに脱がした。パンツに張りついた愛液が、あそことの間に糸を引いたのが見えた。芳香の出した大量のいやらしい液で、ぐちょぐちょに濡れているパンツ。あそこは、もうぎたぎたに濡れていた。
「こんなに濡れるなんて、えっちだな。芳香」
「そ、そんなこと……、言わないでよぉ。」
 順輔もかなり興奮している。目の前の秘部にかぶりつきたいのを我慢して、少しいじわるをしてあげようと思ったのだ。
「芳香、オナニー見せて。オレはここで見てる」
「えぇっ、……そ、そんなぁ……」
 こう言っている間も、芳香のあそこからは液がとぷとぷと流れ出ている。順輔は芳香の手を掴んで、あそこへと導いた。
「やってみな。これも気持ちよくなるための練習だよ」
 普段からいろんなことの「コーチ」になっている順輔の言葉に逆らえず、芳香は自ら手を動かし始めた。いつも家でやっているような、一人ベッドの上で裸になってする、いやらしい芳香のオナニー。秘部に溜まっている液を指につけると、その上にある小さな芽を触り始めた。
「んんぁ、ひゃっ! うくぅぅっ!」
 順輔に見られ、恥じらいながらぎこちなく動く手。いつも順輔とえっちな事をする時とは、ちょっと違う興奮がふたりの間に流れる。
「あぁぁっ、順輔くん、……だめ。だめなの……。私、だめ。早くぅ、順輔くんに、してもらいたいの……」
 横で見ている順輔に言う。
「何をしてもらいたいの?」
「あぁん、い、いじわるぅ……」
 必死に我慢する順輔。芳香の求めている事はわかっている。だけど、もっと興奮するための、えっちな質問。
「あぁっ、……芳香の、……芳香のお○んこ!! 順輔くんに、順輔くんに舐めて、……む、無茶苦茶して欲しいのぉ!!」
 芳香が、外に聞こえんばかりの声で叫ぶ。あまりにもはっきりとした物言いに、順輔は少し驚きながらも、自らも服を脱ぎながら、芳香にごほうびをあげる。芳香の足を掴み、その柔らかい体を生かして、脚を頭の方まであげた。大切な場所が、はっきりと見えてしまうその体勢に、芳香はすごく恥ずかしくなりながらも、今から順輔がしてくれることに期待する。
 順輔は、そこへむしゃぶりついた。
「あぁぁんっ! い、いいよぉ!」
 ちゅぷっ、ぢゅっ。
 芳香の液を、吸い取る様に舐める。あそこを左右に押し広げると、少し大きくなった芽が表れた。包皮を剥いて、ぎゅっと掴んでみる。
「きゃぁん! いやぁあっ!」
 いきなりの刺激に、芳香の腰はぴょこんと跳ねた。順輔は手で抑えながら、芳香の芽を舐めあげる。
「んぁぁっ、んふっ、あっ、き、気持ちいいよ! 順輔くん、気持ちいいよぉ!」
 口に指をくわえて、快感に耐える。順輔は、芳香の腰をぐいっと掴むと、膝立ちになった。芳香の背中から、逆立ちした状態になる。その状態で、順輔は芳香の大事な部分を舐めまわす。
「いいか! 逆立ちは重要なんだぞ! 芳香! がんばれ!」
 順輔は、一瞬自分でも何を言ってるのかと思い、ツッコミをいれたが、今はそんなどころではなかった。
「あぁぁっ、順輔くん! わ、わたし、がんばる! ……えっちも、……体操もがんばる!」
 順輔の舌が、芳香の大切な部分を這い回る。うっすらと陰毛の生えてきた恥丘から、芽、秘部、おしり、すぼまったところ……。
「はぁあっ、じゅ、順輔くん」
 順輔は芳香の声を察し、芳香の体を寝かせた。そしてトランクスを下ろす。14歳の、歳相応の大きくなったモノがピンと跳ね出た。だが、いつもと違う場所でしている興奮が、順輔のものをより一段と大きくさせている気がした。
「芳香、いくよ」
 芳香がうなずく、さきっぽをあてがい、ゆっくりと入れて行く。
「あぁぁっ、んぁっ!」
 何度かしている挿入。初めてやった時よりも、いくぶん入れやすくなっているが、それでもまだきついような気がする。腰を入れて、根元まで入れる。入りきった時に、先っぽがほんのちょっと何かに当たった感触がした。
「あぁっ、よ、芳香。……入ってるよ。芳香」
 順輔は、芳香の手を結合部へ導く。
「入ってる、わかるよ! 順輔くん。……いいよぉ!」
 ゆっくりと腰を動かす。芳香も耐えきれず、腰を振り始めた。まだ未熟な2人でも、えっちの素質と興奮は立派だ。
 ふたりがタイミングよく腰を動かすたび、結合部から「ぐちゅっ、ぐちゅっ」という音が響き、芳香の愛液、順輔の唾液と先走り液が交じり合い、泡を立てる。まだ若い二人には、あっという間にエクスタシーに持って行かれそうだった。
 ぐちゅ! ぐちゅっ! ちゅっ!
「あぁぁん! はぁ、ぁん!」
「ふぅっ、あぁ、いいよ、芳香!」
 腰を動かすたびに、秘部からいやらしい音と泡が沸き立つ。中学生と小学生のえっちとは思えない、とても激しいものだった。
「あぁっ、順輔くん。順輔くん、んんっ!」
 芳香がうわごとの様に名前を呼ぶ。
 順輔は、繋がったまま芳香の体を起こすとおしりを持ち、ゆさゆさと揺さぶり始めた。
「はぁん! あっ! あっ! あぅっ!」
 芳香の体重でより深く突き刺さる。先っぽが、芳香の中の奥に当たっている感覚がしっかりとわかった。まだきつめの芳香のあそこの中へ、揺さぶられる振動が激しく伝わってくる。
「んぁっ! あっ! いいよぉ! あぁん!」
 おしりに手を当てて、芳香を支えている順輔。その手は、芳香のあそこから流れ落ちる愛液で、おしりもろともグチョグチョに濡れ、その下のマットへと滴り落ちていた。
「あぁっ、芳香。……た、倒すよ」
 芳香をゆっくりと寝かせる。順輔はその上に覆い被さり、また正常位の体勢に戻り、再び前後の抽送を始めた。
「はぁっ! はぁっ! んぅっ! ……っぁ!」
「はぁっ、はぁっ、くぅっ、芳香ぁ!」
 腰を動かす早さがだんだんと早くなる。肌と肌が触れ合い、パチンパチンと音がする。結合部はぐちゅぐちゅという音を出し、その液がさらにマットへと流れ落ちる。
「はぁぁっ! 順輔くん、だめぇ! 芳香、もうだめぇ!」
「オレも、……オレももうだめだ! 芳香! あぁぁっ」
 エクスタシーが近づく。ふたりともこの快感をもっと長く、そしてこの快感の思いとして中に出したいが、お赤飯を向かえている芳香にとって、そして中学生と小学生という若いふたりにとって、それはいくらなんでも危険行為だった。
 順輔の腰を動かす早さがより早くなり、芳香も絶頂が見えてきた。
「あっ! あっ! あっ! 順輔くん! あぁぁぁっ! んっ!」
「んんっ!」
 芳香がぐっと体をのけぞらせたと同時に、順輔はモノを引きぬいた。その瞬間、絶頂を迎えている芳香のおなかの上に、白い液がびゅっびゅっと、勢いよく発射された。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
「ふぅっ、はぁっ、ん……」
 肩で息をしながらうつろな目の芳香。白い液体は芳香のおへその辺りに大量に発射され、少しマットへと流れていた。順輔は息を切らしながら、ぺたんとその場へ座り込んだ。


 2週間後の土曜日。学校からは少し離れた市の体育館へ、順輔は自転車を飛ばしていた。今日は小学生の器械体操大会。順輔は学校が終わってすぐ家へ帰り、昼飯も食べず着替えてすぐに家を出たのだ。
 湯川先生から聞いた話では、6年生女子マット競技は午前中。着く頃には、もうすべての演技が終わっているだろうが、それでも順輔は芳香の元へすぐにでも駆けつけたかった。順輔は駐輪場へ自転車を止めると、市民体育館の階段を駆け上がり、会場へ入っていった。
 体育館のアリーナでは、各競技が行われている。その周りを取り囲む観客席に、各学校の待機場所がある。順輔は周りを見回しながら、自分の小学校の待機場所である席へ向かう。そこには後輩達の姿はいくらか見えたが、芳香の姿はない。
「順輔くん!」
 後ろから声がかかった。そこに、跳び箱の演技が終わった、試合着姿の芳香が駆けて来た!
「順輔くんやったよ!」
 芳香は叫びながら順輔に抱きついた。その反動で、順輔は後ろへ転んでしまった。
「でぇっ!」
 ずででででっ!
「……痛てててて。な、なにするか〜っ」
「あ、ご、ごめん!」
「ちょっと、木村さん。うれしいのはわかるけど怪我しないでよ」
 湯川先生の声が頭上からかかる。よく見ると、後輩達がじっと見てる。
「ば、ばか……。芳香、みんなが見てるからはやく立て」
 順輔が耳元でボソッと言う。
 あれから、2人はものすごいたくさんの練習をした。懸案の後転倒立は最後の最後まで出来なかったが、本番で見事出来たのだ。いや、湯川先生の話では「できたと言うよりごまかせた」という事だが、順輔は経験を生かして、ごまかせる手段も教えていたのだ。
 順輔は立ち上がって、ズボンをパンパンと叩く。よく見ると、芳香の顔に泣きあとがある。
「泣いたのか?」
「う、……うん」
「悔し涙か?」
「違うよ、嬉し涙」
「よし! よくやった!」
 順輔は後輩や先生が見ている中、芳香をぎゅっと抱きしめた。うらやましがっている後輩。見てられんという表情の先生。
 あえて芳香の得点は聞かなかった。芳香が満足してくれればそれでよかったからだ。「9.00」という結果で入賞したが、全体的なレベルが高かったため、芳香の小学校は県大会の出場は誰も出来なかった。湯川先生は、それを少し悔しがっていたが、みんなの練習の成果が発揮できた事をすごく喜んでいた。

 午後4時、大会が終わって、順輔は一足先に小学校へ行った。そしてあとから、大会を無事に終えたみんなが戻ってきた。待っていた先生の輪の中に、順輔や同輩達も加わり、拍手でみんなを向かえた。
「長原君、ちょっと」
「はい?」
 会議室での打ち上げ会の途中、順輔は湯川先生に呼ばれ廊下に出た。それに気付いた芳香はちょっと不安な顔をしていた。
「木村さんに何かしてあげてるの?」
「へ?」
 順輔の心臓が、ドキッという大きな音を立てたような気がした。
「彼女、なんだか最近大人になったみたいじゃない」
「あ、……はぁ」
「……まぁいいわ、でもほどほどにしときなさいよ。……普段は順輔くんって呼ばれてるんでしょ。大切にしてあげなさい」
「あ……、はい!」
 そう言って、湯川先生が会議室へ戻った。
「入りなさい」
 ちょっと呆然としている順輔を見て、湯川先生が笑って言う。順輔は安心してふーっとため息をついた。会議室に入り、芳香の近くへ行く。湯川先生がこっちをみていたずらっぽい笑顔をする。芳香の顔が、少し赤面したのがわかった。
 打ち上げを終えて帰り道、順輔は自転車を押して芳香と話をした。
「ねぇ、湯川先生になんて言われたの?」
「ん? ……」
 順輔は少し考えたあと、自転車を止めて、芳香にちゅっとキスをした。
「きゃっ!」
「大切にするよ! 芳香! 」

 おしまい



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